★転住・転宅

 2014年暮れの12月に入居したマンションを引き払い、転住することになった。その算段はほぼすべて配偶者が仕切っている。私にはそうした能力が欠けているからである。とは言っても仕事で使ったメモ類、ノート類から細かな文房具、さらには電子機器の類、70年代学生時代に固め読みしたISBNコードのない文庫本、新書本、単行本の類など、私自身に関わるものは、昨年末から少しづつ整理し、処分をしてきた。勤めていた大学の研究室においていた本に雑誌の類も退職にともなって処分をした。たまたま知った古本屋に引き取りを頼み、持っていた蔵書の3分の2近くは古書としてこの世のどこかに存在し続けることができそうだが、残りのものは廃品回収(今は貴重な資源回収と表現する)業者に出した。
 私が物心ついた時から60年余の軌跡がそれら本や雑誌には宿っている気配を覚えながら、古本屋の評価を待つ間、何か自分の心の中を覗き込まれている気恥ずかしさがあったことも確かだ。
 整理の中で出てきた段ボールの中に押し込まれたままの取材メモや学生時代の大学ノート、旅行で行った先で集めたマッチ箱、利用した列車や航空機のチケットの類は色あせている。その状況が今の私の心根を凝縮しているようだ。この転住を機に自分の「所有」するものを処分していく必要があることに気がついた。