●印刷業界と出版社

livedoor new経由J−CAST発信の記事から――2009/05/20 

 印刷業界が立ち行かなくなりかけているから、コンテンツ制作専門のお客さんである出版社にテコ入れするという状況は、穿った見方をすれば、業界自身の尻に火がついたどころか、全身に火の勢いが回りはじめているのではと思わざるを得ません。大日本のテコ入れは、その意味では砂に水をやるようなものでしょう。松岡正剛風に言うならば、グーテンベルグ活版印刷術発明による世界のパラダイムシフトと同様の状況が、今まさにインターネットという道具によって進行しているのは間違いありません。「紙とインクはもう不要だ」というようなフレーズが、PCが登場しウェブが急速に進展しはじめた当初、もてはやされていましたが、それがリアリティを持ち始めています。
 「鉛筆を使って文字を書くのは止そう」という声が米国であがりましたが*1、FNPというサイトでは、米国の地方新聞は消滅し、ウォールストリートジャーナルでは記事単位のばら売りをネット上で初めていると書いています。*2

 マスコミへの志向も、これまでのエスタブリッシュメントの姿をなぞるのでは、数年先には“沈没”してしまうだろうと思います。どのように系統だてて行けばいいのか、小生の乏しい知識ではお手上げですが、ひとまずは社会の姿を「取材し」「評価し」「発信する」ためのバックボーンとして「教養」が必要だと考えます。それが、発信していく情報の質を担保するということです。

大日本印刷は出版業界の救世主? 「主婦の友」救済に「ブックオフ」出資(2009年05月20日11時37分 / 提供:J-CASTニュース
 印刷業界2強の一つ、大日本印刷が出版業界への投資を加速している。書店大手の丸善図書館流通センタージュンク堂書店を2008年相次いで子会社化したのに続き、2009年5月には女性雑誌の老舗、主婦の友の株式約39%を取得し筆頭株主に。さらに、古書販売チェーンの「ブックオフ」を展開するブックオフコーポレーション講談社集英社小学館の出版大手3社を巻き込んで出資することも決めた。
創業の原点を自らテコ入れ
  大日本印刷の幹部は次のように説明する。
「今のままでは出版印刷は縮小の一途。ここは大日本の創業の原点。そこを自らテコ入れし、電子出版などの新ビジネスも着実に獲得していく」
  1876 年創立の大日本は出版や紙幣などの紙印刷を主体に成長してきた。しかし、90年代以降、インターネットの普及にともなう出版市場の地盤沈下が続き、「携帯小説」や「電子辞書」に代表される電子出版への対応を強化した。液晶パネル部材などにも力を入れ、大手電機メーカー、シャープなどとの取引を増やしてきた。ところが08年後半以降、電子事業が急速に失速。09年3月期の連結決算は、同部門の製造設備の減損処理が重荷になり、上場以来の最終赤字の可能性も指摘される。
 そこで取りざたされるのが、出版という原点への回帰だ。
 08年の書籍と雑誌を合わせた出版物全体の販売額は前年比 3.2%減の約2兆177億円(出版科学研究所調べ)。09年1〜3月期は前年同期比4.0%減に落ち込んでおり、3月は書籍返品率も 32.6%と、前年より1.8ポイント増。高い返品率が出版社の収益悪化の要因となっていることが分かる。
 ブックオフは全国に約 1000店舗を展開する。著作権の扱いがあいまいな中古本の大規模な取り継ぎ業務のほか、出版社が売れ残った新書の再販価格指定を解いて市場に流す「自由価格本」の取り扱いで業容を拡大してきた。再販価格の守りたい講談社など出版界の正統派にとっては「目の上のこぶ」のような存在だった。
異端児ブックオフを容認する
 今回、大日本の呼び掛けで、出版大手3社がそろって出資することを決めたのは、出版業界が異端児を容認する姿勢に転換したことを意味する。中古本販売の際に著作権料を著作権者に支払わず、「タダ乗り」と糾弾してきたブックオフを、逆に中古本や自由価格本をめぐる著作権料支払いの新たな制度づくりの土俵に乗せ、出版業界全体の底上げにつなげたほうがいいのではないか――。大日本はそこに目をつけ、出版大手を説得したということだ。
 主婦の友への出資では、すでに同社の婦人向け雑誌の企画・編集ノウハウを活用した電子端末向けソフトの開発に取り組む方向を示唆。大手書店の丸善ジュンク堂などの店頭では、ICタグを使った在庫管理の徹底なども進めている。丸善の一部店舗では大型のタッチパネルを設置し、新刊や人気書籍ランキング、関連映画などの情報を動画で紹介するサービスも始めた。潤沢な資金で出版業界に新風を吹き込む大日本の戦略は、出版業界の「救世主」になるのか。

http://news.livedoor.com/article/detail/4161745/
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