●70年代の総括

 朝日新聞の夕刊で「反逆の時を生きて」というタイトルで、60年代から70年代の“政治の季節”を走り抜けた人たちの当時と今を織り込んだ連載をしていた(2009年6月19日から7月14日まで15回)。読みながら、ここに登場する人たちは一体、今の時代に繋がるようなことを何か成し遂げたのだろうか、と考えた。記事に書かれている懐古趣味、あるいはセンチメンタリズムに満ちた話に少々嫌悪を抱きながらも、結局は、ただ青春だったね、と言っている前期高齢者の昔話のようにしか聞こえてこないのだ。言えることは、確かに今の荒んだ時代を形成する片棒を担いできたにすぎないことだけはわかるということだ。こうしたいわゆる左翼(あるいはリベラル)と呼ばれる人たちが、高度経済成長の波に乗り、なし崩しのように時代の先端から消えていき(中には功なり名を成した人たちも登場したが)、その一方では、対抗軸を失ったいわゆる右翼と呼ばれる人たちも思考停止状態の迷路に迷い込んでしまったからだ。かくいう私自身も、そうした“政治の季節”の最後っ屁のような時代に青春を送った一人だが、この連載に登場した人たちからの“遺産”は何も受け取っていない。所詮は、“アップレ・アップレ・ゲール”、“遅れすぎてしまった青年”に過ぎないのかと、自分自身を揶揄しつつも、およそ30年ほど前に新宿ゴールデン街や新宿2丁目、3丁目あたりの安酒場で管を巻いていた頃を思い出しながら、「てめーらに俺の気持ちが分かってたまるか!」と叫んでいた同世代の心の内に共感を覚える。